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認知症とは
認知症について目にしたり耳にしたりする機会が増えてきました。
2012年時点で462万人(高齢者の7人に1人)とされる認知症患者数は、2025年には約700万人(高齢者の5人に1人)になると推計されています。
また、認知症は要介護の原因においても、2001年では「脳血管疾患」「高齢による衰弱」「骨折・転倒」に次ぐ4位の割合でしたが、2007年には脳血管疾患に次ぐ2位となり、その割合は激増傾向にあります。
すなわち、認知症は特別な疾患ではなく、高齢になればなるほど誰もが罹り得る〝身近な病気″であると言えます。
認知症とは、どういった病気なのでしょう?
認知症とは、一度正常に達した認知機能が後天的な脳障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を指します。
また、その病因によって「アルツハイマー型認知症」、「血管性認知症」、「レビー小体型認知症」、「前頭側頭型認知症」の4つの認知症に大きく分類され、アルツハイマー型認知症と血管性認知症の2つで日本の認知症の6~7割を占めています。
認知症によって現れる症状は、「中核症状」と「周辺症状」に分けてとらえるとわかりやすいとされています。
中核症状は認知症であれば必ず現れる症状で、「記憶障害」「見当識障害(判断力・理解職の低下)」「失語・失行・失認」「実行機能障害」などのことです。これらは認知症の進行に伴って進行してしまいます。
それに対して、周辺症状は中核症状があることによって、日常生活上の様々な事柄を把握、理解し対応することが困難になることで出現してしまう心理的変化や行動変化を指します。
認知症患者の歯科治療における課題
高齢者の受診率の高い歯科医院でも、認知症患者を拝見する機会が多くなっているのは間違いないでしょう。
実際に認知症が疑われる症状によるトラブルを経験することがあります。
以前治療に通われていた70代男性は、いつも来院時に入れ歯を外して来られます。「〇〇さん、義歯はお持ちですか?」と尋ねると、「受付に渡しましたが?」や「女性の方に渡しましたが?」と仰ります。受け取っていないことを伝えると、着てこられた背広やズボンのポケットを探されて、綺麗にティッシュにくるまれた義歯が出てくるのです。
身なりや言動もしっかりされていて、初めはたまたまうっかりされたのかと思いましたが、その後も来院される度に同じやり取りを繰り返されることとなりました。
その他でも、治療説明(ブリッジと入れ歯の違い)を何度しても上手く理解して頂けない、予約を取っていない日に来院してしまう、などの治療を進める上での問題もみられるようになりました。
治療内容は紙に書いてお渡しする、予約確認のお電話をこちらからさし上げるなどの対応を行ってみましたが、その効果も曖昧で、対応の難しさを日々実感しています。
その他の認知症を疑うトラブルでも、多くの場合に共通しているのは、患者さんご自身が認知症と自覚されていない(うすうす気づいていても認めたくない)ということです。
患者の間違いを指摘したり、とがめるような言い方をしてしまうと、多少の記憶の不都合を感じながらなんとか生活している方にとっては取りつくろう反応が出てしまうことも少なくないでしょう。
もしくは、多少の不都合の自覚があるからこそ、指摘されると認めたくない心理に陥り、感情的になってしまうこともあるのでしょう。
どのような場面においても、いったん患者の感情を受け止め、言い分をよく聞き、“自分の言い分をわかってもらえた”と感じてもらうことが大切だと考えています。
今後の認知症と歯科の関りについて
今後も増え続ける認知症患者に対して、国も動き出しています。
厚生労働省は、2013年から「認知症施策推進五カ年計画(オレンジプラン)」、2015年には「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を策定しました。
この中で歯科医師の役割は、認知症の早期発見・早期対応と併せて「歯科医師の認知症対応能力の向上」が明示され、作成された研修テキストをもとに研修事業も順次行われています。
かかりつけ歯科医院は長期にわたって患者と向き合うなかで、認知症の兆候に早期に気づくことできる医療機関であり、認知症の早期発見・早期治療に貢献することができます。
また、お口を健康に保ち良好な食生活を送ることが、認知症の発症予防につながると様々な研究から明らかになっており、認知症を予防するという面においても果たす役割は大きいと言えるでしょう。
歯科医師も認知症に対する正しい知識や対応を身につけていくことが、地域に密着した歯科医院として欠かせない課題だと考えています。
川西市の歯科医院 市川歯科医院
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