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歯周組織再生剤リグロスについて|兵庫県川西市の歯科「市川歯科医院」

真に“治る”とは、「すり傷が新しい皮膚で覆われて元の状態に戻る」、「骨折した骨がくっついて元の状態に戻る」といった、“失われた組織が再生して元の状態に戻る”ことでしょう。

むし歯の治療終了後、患者さんに「治しておきましたよ」と伝えます。
しかし、実際には失われた歯を金属や樹脂で補って再建しているにすぎません。
つまり、むし歯で溶けて失われた組織を再生し元の状態に戻すことは、残念ながらできないのです。
義歯(入れ歯はもちろん被せや詰め物も含む)は体の組織を模して再建するという点において、サイズの違いはあれど義足や義手、義眼などと同じと言えます。
世界中の研究者が“再生”を夢見て研究を重ねていますが、歯科治療の大半は自家や他家組織の移植と生体材料による再建が占めています。

そんな中、歯周組織(歯を支える歯槽骨や歯根膜)を再生させる歯周組織再生剤『リグロス』が開発されました。
以前から、歯周組織再生剤としてエムドゲインという材料が長年使われてきました。
このエムドゲインがブタの歯胚から抽出された材料であるのに対し、リグロスは遺伝子組換えヒトbFGF製剤であるという違いがあります。
エムドゲインは長期臨床結果からも安全性は実証済みの優れた材料ですが、リグロスは人体に本来備わった細胞増殖因子を用いているという点でより安全で、かつ種々の対照比較試験で歯槽骨の再生量もエムドゲインよりも優れた結果が報告されています。

また、リグロスは大阪大学歯周病分子病態学の村上伸也先生が中心となり開発された、日本初世界初の歯周組織再生剤です。
効果と安全性の検討を目的とした10年以上の治験を重ね、2016年11月に薬価収載されました。
すなわち、保険外治療として使用する必要があったエムドゲインとは異なり、リグロスは保険治療で使用することができるということも患者さんにとって大きなメリットでしょう。

歯周組織の再生は以前から行われてきましたが、手技的な繁雑さや予知性の低さなどから、難易度の高い処置といえます。
「再生療法は術前に期待した再生量の6割の歯槽骨ができていれば成功と言ってよい」と言われるほどです。
リグロスの誕生によって歯周組織の再生はより身近なものとなることは間違いありませんが、失われた組織が完全に元に戻る夢の薬ではないので、組織を失わない“予防”の努力が一番賢明なのは言うまでもありません。
予防も含めた今までの歯周病治療に、リグロスを用いた再生療法を上手く組み合わせれば、歯周病で失う歯を減らすことに繋がるでしょう。

先日、開発者の村上先生のリグロスに関するご講演を聴く機会がありました。
四半世紀以上かけて開発に取り組んできて、いよいよ世に送り出すリグロスへの情熱は話からもヒシヒシと伝わりました。
研究者の積み重ねてきた努力に感謝するとともに、その功績を患者の健康に繋げていけるようにしていかなければと考えております。

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