歯科ブログ

抜歯の基準について

2020.05.17

患者さんから、「前の歯医者で歯を抜かれた」「○○先生は歯を抜かずに残してくれた」といった真逆の話を伺うことがあります。
同じ抜歯でも、なぜ患者さんの受け取り方は真逆になるのでしょうか。

ここでまず大切なことは、抜歯か保存かの選択は、歯科医師の診査・診断・説明のもと、患者さんが最終的に行うことです。

“歯を抜かれた”という、患者と歯科医師両者にとって望まれざる結果を招いてしまうケースは、抜歯について、歯科医師の説明と患者の納得・同意が不十分な場合がほとんどです。

一方で”歯を残してくれた”というと聞こえは良いですが、患者が”歯を抜かずに残す”と決定するための、歯科医師による適切な診査・診断・説明が不十分な場合もあります。

例えば歯周病に関していうと、歯周病はかなり進行しなければ痛みとしては自覚しません。
”痛みが出たら抜歯”と思っておられる患者さんも多いのです。
しかし、痛みが無いから大丈夫と放置していると、いざ痛みが出て抜歯したら歯槽骨が大きく失われ、その後の歯を補う治療(入れ歯やブリッジ、インプラント)が非常に難しい状況になってしまいます。
歯周病で溶けた骨を再生させることは難しく、進行する前に早め早めの治療や予防が大切です。
そのためには定期的な歯周ポケットの深さの検査や、レントゲン写真撮影による歯槽骨の状態のチェックは有効です。
もちろん、レントゲン写真撮影は虫歯の早期発見にも効果的です。
もし、歯周病や虫歯の進行を認めれば、適切な治療をして歯周病菌や虫歯菌が住み着く環境を改善し、それ以上進行しにくいようにしなければなりません。

適切な診査のもと、抜歯が非抜歯より有益であると診断すれば、やむ無く抜歯を提案しなければなりません。
経過観察ではなく放置になってしまっては、患者さんが先々に不利益を被ることにもなり得ます。

非抜歯で進めるとしても、適切な診査→診断→説明→同意→治療→メインテナンスをして初めて”歯を残す”ことに繋がるのではないでしょうか。

ちなみに、歯を抜歯するか否かの判断には、さまざまな因子について考慮しています。

①患者の状況
・歯の保存に対する患者の希望、治療への協力度(通院回数、セルフケア等)、財政状況など
②全身状態
・喫煙、糖尿病、血液疾患、循環器疾患、その他疾患など
・服薬状況(骨粗しょう症治療薬や抗血栓薬、抗凝固薬、免疫抑制剤など)
③臨床的な診査結果
・痛みの程度、歯肉の炎症・腫脹、歯周ポケットの深さ、歯槽骨の状態
根分岐部病変の進行度、歯の動揺度、歯根破折の有無など
④その他
・歯の補綴や修復の可否、術者の技量(歯内療法や歯周再生療法の可否)など

上記のような因子を考慮して判断しますが、一つとして同じ人や歯はありませんので、抜歯か否かの決定に絶対の正解は無いとも言えます。
やはり改めてになりますが、患者さんとの間にしっかりとした信頼関係を築き上げ、治療していくことが大切です。
また、一本の歯を残す努力ももちろん大切ですが、お口全体、そして体全体にとってより良い治療計画を考えることも必要となるでしょう。

適切な診断力や歯を保存する技術を高め続け、且つ、患者さんに分かり易く伝えられるよう努めて参ります。

市川歯科医院 市川雄一


   [レントゲン撮影装置]

二次元画像のパノラマ写真、セファロ写真に加えて、三次元のCT画像も各種診断に役立てています。

 

 

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