歯科ブログ

虫歯(う蝕)のマネジメントについて

2020.06.21

患者さんが虫歯(う蝕)について思い浮かべるイメージとして多いのは「穴が空いている」「黒くなっている」といった『う窩』の状態でしょう。
そして、う窩を削って詰めればう蝕は治るものと考えていることが多いです。
しかし、「う蝕=う窩」といった単純な問題ではなく、「う蝕は脱灰と再石灰化のバランスが脱灰優位になっている状態」と認識することが大切です。

歯はリン酸やカルシウムで構成されていますが、虫歯菌が食物中に含まれる砂糖などの発酵性炭水化物をもとに出す酸や酸性の食物によってお口の中が酸性環境になり、こうした成分が歯から溶け出します。
この状態を「脱灰」と呼びます。
逆に、唾液の緩衝能などによって口腔内環境が中性に戻っていくと、脱灰によって歯から溶け出したリン酸イオンやカルシウムイオンが再度取り込まれます。
この現象を「再石灰化」と呼びます。
すなわち、食事をする度に、歯は「脱灰」と「再石灰化」を繰り返しているのです。
こうした脱灰、再石灰化のバランスは目に見えないため、う窩になって初めてう蝕治療をするのでは不十分であり、
「再石灰化>脱灰」の状態を維持していくための継続したマネジメントが必要と言えるでしょう。

では、脱灰や再石灰化にはどういった因子が関与しているのでしょうか。
脱灰を進める因子としては、
う蝕原生細菌が多い、プラーク(歯垢)が溜まっている、唾液量の減少、唾液緩衝能の低下、発酵性炭水化物の頻回摂取、などが挙げられます。
再石灰化を進める因子としては、
プラークの蓄積が少ない、唾液量が多い、唾液緩衝能が高い、発酵性炭水化物の摂取頻度が少ない、フッ化物の応用、などが挙げられます。

このような因子に加えて全身疾患や社会経済的要因も影響します。
う蝕は生活習慣病とも言え、う蝕マネジメントにおいては、患者さんの生活面や健康面でのアプローチも重要となってきます。

適切なセルフケアと規則正しい食習慣など、患者さんご自身ができるう蝕予防に加えて、定期的なメインテナンスを加えられることをお勧めします。
う蝕も歯周病と同様に予防がもっとも大切なことは言うまでもありませんし、もしう蝕を発症した場合でも、早期に発見し治療することで重症化を防ぐことができます。

余談ですが、う蝕は白班病変(歯がチョークを塗ったように白濁した状態)であれば、食習慣やプラークコントロールの改善に加えて、再石灰化を促すペーストやガムの使用で改善や進行抑制を行うこともできます。
再石灰化を促すペーストとして『MIペースト』やガムの『POsーCaF』がお勧めです。

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市川雄一

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